『自殺について』

 ショウペンハウエルが言うに世界は苦痛で満ちているものだと。僕もそう思う。彼の悲観主義とも言える価値観は共感できる所もあるし、好きだ。でも、この本は少々癪に障る点というか納得がいかない事が多かった。 例えば、アリストテレスの「自殺は自分自身に対する不正とは言えないとしても、国家に対する不正である」という言葉を引用している所。完全に感情的なものだけど、こんな考え、僕は到底受け付けられるものじゃなかった。何よりも1番納得いかないのは人間は皆生まれながらにして罪を背負っていて苦痛に満ちた世界で生きることで罪を償っているという考え。この考えに至っては原罪思想じゃん、キリスト教に批判的な立場取ってたんじゃないの?って言いたくなる。

 とは言え、一番最初に言ったように基本的に彼は好きだ。

「未だかつて、現在のなかで、自分は本当に幸福だと感じた人間は一人もいなかった、
――もしそんなのがいたとしたら、多分酔っぱらってでもいたのだろう。」なんて言っちゃうんだから。