セックスに付随する小さな死とエロティシズムから程遠いブス

ジョルジュ・バタイユはエクスタシーをLa petite mort(小さな死)と表現したが、これはセックスが死の疑似体験である事を意味する。エクスタシーの原義は持つ意味は恍惚状態、忘我、脱魂等が挙げられるが、セックスの際に生じるエクスタシーとはいわば魂がエロティシズムによって生じた快感で自我を忘れ昇天する恍惚状態である。また、セックスに於いて、射精やオーガズムに達する際「イク」という表現がしばしば使われるが、これは自我が天に登って「行く」「逝く」事も意味している。

 

バタイユはエロティシズムの本質は禁忌を侵す事にある(禁忌を不安状態下で侵す事によって成立する)としており、例を挙げるなら不倫であろう。不倫は婚姻関係の侵犯であり、内緒で別のパートナーと肉体関係を結んでいる。この関係が公になってしまった際には社会的ダメージがある。そうした危険性を孕んでいるからこそ不倫関係は欲望は燃え上がるのだ。

また、もう1つ「美」が重要視されている。理由としては美を汚す事に喜びを感じられるからであり、人間性は、侵犯され、冒涜され、汚される。美が大きければ大きいほど、汚す行為も深いものになってゆく。元来、醜いものはそれ以上汚しようがなく、欲望が燃え上がることはない。