嫉妬について

 性愛の本質の条件に『相手をほかの人が愛するとき、嫉妬を感ずること。言いかえれば、その人を(さまざまなレベルで)独占したいとき。』というものがある。

 つまり、私が愛している人物が別の誰かを愛しても何も嫉妬を感じない時、私をその人を愛しているのではない。ゲーテ著の『若きウェルテルの悩み』の主人公ウェルテルは人妻のロッテに恋した結果、こう言い放つ。「ぼくだけが、ロッテをこんなにも切実に心から愛していて、ロッテ以外のものを何も知らず、理解せず、所有してもいないのに、どうしてぼく以外の人間がロッテを愛しうるか、愛する権利があるか、僕にはときどきこれが呑み込めなくなる。」

 脳が恋愛モードにさえ陥ってなければ、ある男がロッテを世界一愛していようが、その事実は他の男達が彼女を愛しうることを妨げない事が分かるはずだが、ウェルテルにはこれが全く理解できなくなるのだ。