20170928

出会い系で知り合った人と会った。彼女は所謂メンヘラで手首に傷もあったし、家に来るなり常に持ち歩いているらしいブロン錠を120粒飲み始めた。彼女曰く「飲まないと不安」なんだと。確かにODをする前とした後ではした後の方がよっぽど幸せそうな顔だった。

僕は彼女がODをしてまで逃げたい現実が何なのか知りたいとも思わないし、聞こうとも思わない。ただ、彼女が発する言葉の端々から感じるに恐らく常に漠然とした不安に襲われていて、薬に頼っている間だけはそれを忘れられるって事なんだろう。

80年代半ば以降に個性化教育へと舵を切った日本社会ではそれまでの管理教育に於いて存在した明確な外的価値判断基準が消え失せて幾許か多様な個性のあり方が賞揚されるようになったけど、常に存在論的な不安に駆られる状況になった。アンソニー・ギデンズが言う様にルーティーンや秩序ある空間で約束される存在論的安心がない社会だと彼女の様に漠然とした不安に駆られてしまうのも仕方ない気がしてくる。不変不動の方向を指す羅針盤のない自由な社会が抱える不安定さはあまりに大きいのかもしれない。